2010年 ながはま将棋まつり 1日目 (2010.10.23) (ドクター尼子)

22日(金)は大阪出張があり、『23日のJT杯を見て帰ろう。』と思っていました。
しかし、今週の思いがけない連敗に、いてもたってもいられなくなったのが21日(木)の夜。
『山崎先生の顔だけでも見ないことには、落ち着かない。』と思い、急遽、ながはま将棋まつりに行くことにしました。
将棋まつりのプログラムを印刷しただけで、長浜駅の位置も満足に調べず、出発するというアバウトさでした。
出張の道中で、ひーちゃんさんに
「長浜へ行きます。どの辺り?」
とメールを入れると、
「米原駅から近いから大丈夫。」
と”安心”メールが届きました。
新大阪駅前のホテルにあったMAPで、長浜駅が米原駅から三つめと確認して、ホッ。
何とか行けそうだと思った矢先に、ホテルで眼鏡を尻に敷くという大失態をしでかしてしまいました。
右のつるがポキッっとな・・・。
「ひぇぇぇぇ〜!」
視力は0.1ですから、2メートルも離れると、世界はぼやけてきます。
JT杯もなく、ながはまもなく、泣く泣く岡山へ撤退かとショックを受けましたが、鼻の上に乗せてみると、
『おっ、何とかいける!』。
案内表示を見たいとかいうときだけ掛けることにして、23日の朝、ぼやけた世界へ出発しました。

新大阪駅では、できるだけ間違わないように、米原まで新幹線、その後、在来線を選択。
車窓から見る景色もよく見えず、車内放送だけが頼りです。
さすがに、米原駅構内では、眼鏡を使用して、乗り換え案内を見ました。
在来線に入ってきたのが、新快速でビックリ。
『長浜駅に止まるのかな?』
と不安になりましたが、ホテルでもらったMAP(手元は、眼鏡なしでOK)に、米原駅からは各駅停車とあり、ホッ。
そこからは、またまた車内放送が頼りです。
新快速が動くと、たちまち、田舎の風景が広がります。
乗り合わせた横浜辺りの大学生の集団が、
「おー、空気がきれい。」
「こんな所に住んでみたいよな。」
「この直線(道路)、(車を)ぶっとばしてみたくね。」
と、どこかしら上から目線でしゃべっているのを聞いているうちに、長浜駅。
結構な観光地のようで、先ほどの集団も、お年寄りの皆さんも、大挙して長浜駅に降りて行きます。

改札を抜けて、ぼんやりとした世界のまま辺りを見渡すと、どっちへ行ったらいいのか・・・。
一旦は、こっちと目星をつけたのですが、ちと不安に。
思い直して、そこにいらっしゃったボランティア・ガイドのおじいさんに道を尋ねました。
観光マップをいただき、また、丁寧に道順を教えていただきました。
「会場のある商店街は、人が多いから、すぐわかります。」
それなら、世界がぼやけていても大丈夫そう(笑)
歩き出すと、すぐ後ろから声を掛けられました。
振り返ると、そこに橙さんが!
「お久しぶりです。」
名古屋のJT杯以来です。
「気がついてもらえなかったから、違う方なのかと。」
「いや、実は眼鏡を尻に敷いてしまって、かくかくしかじか。」
「ああ、それで。眼鏡を掛けていらっしゃらないな、と思いました。」
やがて着くひーちゃんさんと待ち合わせと言うことなので、一緒に待つことにしました。
橙さんと顔を合わすのは、確か4回目。
でも、お話したことはほとんどありません。
が、旧知のように話がはずむのが、たこやきメートのすごいところです。
ひーちゃんさんの到着まで、あっという間でした。

長浜の駅前は、とっても静かです。
車は見えても、市民は見えないって感じで(笑)
ドーンとホテルやデパートが建っているわけではないからでしょう。
昨年も来ているひーちゃんさんを先頭に、会場へ向かいます。
「今年は、食べる物に期待しているんです。」
と、ひーちゃんさん。
「去年は、あのお店、このお店と、気になるお店はいっぱいあったのに、ひとりって入りにくいでしょう。
で、結局は、マックで寂しくお昼だったんです。」
この後、ぷみぽんさんと合流すると4人ですから、どこでも入れますね。
「今日のお昼は、『焼鯖そうめん』に決めているんですけど。」
おお、長浜名物ですね。そうしましょう。
そうこうするうちに、大手門商店街が見えて来ました。
確かに、観光客がいっぱいです。
岡山人の私の感覚では、倉敷美観地区と普通の商店街を足して割ったようなところでした。

「あっ、女流の先生がお着物姿で指導対局ですよ。」
とひーちゃんさんの言われる先を見ると、何か黒い固まりが動いています。
近くまで行くと、室谷女流1級が、黒の渋い振袖姿で、多面指しをされていました。
とってものんびりとした雰囲気です。
「参加者が少ないでしょ。だいたい、午後もこんな感じですよ。」
と、ひーちゃんさんが、去年の様子を話してくれました。
確かに、指導対局の席が空いています。
1000円が必要とはいえ、ありえないですね。
で、肝心の山崎先生を捜すのですが、いらっしゃらない!
「幟(のぼり)もありませんよね。」
それぞれ、”室谷女流1級”とか”稲葉四段”とか、指導対局のテーブルに立派な幟が立ててあります。
しかしながら、山崎先生の幟はありません。
「まさか、遅刻?」
「眼鏡を取りに帰られているとか?そんなことが、ありましたよね?(笑)」
「まさか、今日は参加されなくなったとか?」
「えーっ、それはあり得ない!」
と、会場の入り口で囁き合う三人です。

ちょっとがっかりしつつ、さりとて受付で聞く気にもなれず、まずは、昼食に専念することに。
あの店かな、この店かなという相談は、ひーちゃんさんと橙さんにお任せ。
会場横のベンチに座って、女流棋士の先生方の着物姿と、ゆったりとした時間の流れを楽しんでいました。
『それにしても、山崎先生は、どうされたのだろう。』
それを考えると、心が重い・・・。
「山崎先生と会えないと、女流の先生方のお写真を取る気にもなれません。」
そう言うと、
「それは、なかなかの名言ですよ。」
と、お二人に言われました。
でも、ほんとにそんな気分なんですもん。
やがてお店が決定し、ぷみぽんさんとは現地集合ということに。
ひとまず会場を後にしました。

ぷみぽんさんと合流して、4人で焼鯖そうめんや焼鯖寿司に舌鼓。
「結構な量がありますね。」
といいながら、おいしいものはしっかりと入りますね。
12時半頃に会場に戻りましたが、ちょうど、午前中の指導対局が終わったところ。
「ホントに、山崎先生の幟がありませんね。」
と、ぷみぽんさん。
そこに、涼暮さんのお姿が。
「山崎先生ですか。ひとつ向こうの筋で、別のイベントをされていましたよ。」
そうなんですか!
ありがとうございます、涼暮さん。元気、出てきた(笑)

午後のイベントまで時間があるので、近くの大通寺へ参詣しました。
何と、立派な山門の上に上がることが出来、貴重な体験が出来ました。
そして、午後の公開対局です。
客席は、無造作に椅子が並べてあるだけ。
「これから、客席の設営とかあるんですか?」
「いえ、お好きにどうぞ。(後ろの)テーブルの所に椅子をもっていってもらってもいいですよ。」
何とおおらかな(笑)
曳山博物館の縁側で対局して、横で大盤解説、そして、庭から見ているという風情です。
「座りましょうか。」
最前列に三つしかないパイプ椅子に、橙さんとふたりで座りました。
「あれ?ひーちゃんさんとぷみぽんさんは?」
見ると、ふたりは会場の入口に立っています。
前の方は恥ずかしいって言っていましたから。
それでも、あまり観衆は集まりません。
公開対局が始まる直前に、ひーちゃんさんたちも2列目に座りました。

「あ、山崎先生ですよ。」
ひーちゃんさんの声に、右手を見ると、間違いなく山崎先生が、曳山博物館の出入り口から歩いて来ます。
頼まれて、何かにサインしているもよう。
『挨拶するなら今しかない。』
思い立ったらすぐ行動。席を立ち、山崎先生の元へ。
今回は、事前に連絡しなかったので、山崎先生も「おっ!」という感じでした。
「お疲れ様でした。」
「いやぁ、どうも。」
しばらく、近況などを立ち話。
眼鏡に座っちゃった話をすると、
「ベッドでしょう?」
と素早い反応の山崎先生。
「僕もよくやるんですよ。今は、スペアを持ち歩いています。谷川先生にも言われましたし(笑)」

朝の指導対局がなかったのは、プログラムの手違いのようでした。
「谷川先生とは、別の(名人塾の)イベントで来ているんです。
こちらには、ついでに参加しているって感じなんです。
阪田三吉先生の”銀が泣いてる”っていう棋譜を、さっきまで解説していました。」
先生ご自身も、朝の指導対局に自分の名前があって、ビックリだったそうです。
それから、今月最後の対局は、しっかり体調を整えて臨むということも、お聞きできました。
「JT杯の決勝も、応援に行くようにしますね。」
と宣言して(実は、まだ、家内の許しを得ていないのですが)、お別れしました。
席に戻ると、ひーちゃんさんたちから、
「遠目には、山崎先生と、スーツとシャツがお揃(そろ)でしたよ。
また、おふたりの体型が違うところが、お似合いですよね。」
「それって、僕への誉め言葉なんですか?(笑)」
「まあ、いいじゃないですか。よかったんですから(笑)」
山崎先生と私のツーショットは、たこやきメート的にはほほえましい感じがして”ツボ”のようなのです。
自分で見ることが出来ないのが、残念(笑)
さあ、公開対局が始まりました。

まずは、滋賀県小学生名人対稲葉四段の飛車落ち戦。
大人よりしっかりしている感じで、慌てることなく、堂々と勝ち切りました。
次の対局まで、5分程度休憩。
客席横では、解説の山崎先生、聞き手の鈴木環那女流初段、対局者の稲葉四段、大石四段が、ずっと談笑しています。
誰も割り込んでいかないのは、県民性でしょうか(笑)
プログラムの進行も、すごく大雑把で、のんびりとしています。仕切り役も不在だったり(笑)

さて、いよいよ待ちかねた山崎先生の登場です。
聞き手も環那さんだけに、期待感でいっぱい。
山「対局前に、ふたりに話を聞きましょう。
プロになって、この先生は強いな〜と思った人と、こいつは弱いと思った人は、誰ですか?」
後輩二人なので、いきなり、山崎先生ったら、無茶振りです。
さすがに、弱い人の話は出て来ませんでした。当たり前(笑)
稲「谷川先生です。終盤力もすごいですけど、最後まで背筋も伸びて、そういう姿も見習わなくてはと、思いました。」
山「谷川先生がここにいらっしゃっているから、ごまを摺っているんじゃないでしょうね?」
稲「いえ(笑)」
環「ごまを摺るなら、別会場の谷川先生に届くように、もっと大きな声で言わないといけませんよ。」
稲「・・・(笑)」
大「渡辺竜王がすごかったです。ボロボロにされましたけど。オーラを感じました。」

両対局者が駒を並べている間、さらに両棋士の紹介です。
環那さんは、さすがに事前の調査が行き届いて、両者の今期の成績や対戦成績などをスラスラと口にします。
山「稲葉四段は、A級キラーなんです。A級棋士に勝ち越しているので。強い人に強いタイプです。
ただ、勝てそうな相手に負けてしまうところがありますね。」
環「たとえば、里見さんとか。里見さん。それしか浮かびませんが(笑)」
すかさず環那さんの突っ込みに、稲葉四段、苦笑。
山「そう、里見さん。あの将棋は、僕も同じ日に対局をして見ていたんですけど、完全に力負けしていましたね。」
さらに苦笑するしかない稲葉四段でした。

山「大石君は、攻めは強いです。攻めは、一級品。」
環「と、言いますと。」
山「受けに難があります。まあ、弟弟子なんで無茶苦茶に言いますけど(笑)、受けは並。」
今度は、大石四段が苦笑する番です。
山「今期は負け越していますけど、大石君は、一年目から王位リーグへ入っていますからね。
一年目からリーグ入りって、滅多にできる物ではありません。
先ほどの渡辺竜王との対局も、王位リーグですね。」
環「そう言えば、(弟弟子の)大石先生から、山崎先生の名前が出ませんでしたね。」
と、急に突っ込まれた山崎先生。
山「いやあ、弱い人なら僕の名前が出たと思いますよ。
僕は、(王位リーグの枠抜けの一番で)大石君に負けましたから(苦笑)
大石君に攻められる展開になって・・・。彼のプロになって一番の会心譜だと思います。」
今度は、にんまりして肯く大石四段でした。



大石四段の▲76歩で始まったと思うのですが、延々、195手まで続いたため、よく覚えていません(笑)
山崎先生は、いつもの丁寧で分かりやすい初中級者向けの解説ぶりでした。
なぜ、こう指すのかを、ちゃんと教えて下さいます。
その解説の合間に、両対局者の話題が混じります。
環「お二人とは、ほとんどお話をしたことがなかったんですが、さっきお話をしたら、タイプが全然誓いますね。」
山「どう違うんですか?」
環「稲葉四段は、何を言っても受け流しちゃうんです。
『そうですか?ふふふ。』って。」
山「大石さんは?」
環「大石四段は、私が何を言っても受け入れてくださるんです。
『そうですね。ふふふ。』って。」
山「そのどこが違うか、分かんないんですけど(笑)」
環「いや、ホントに違うんです。」
なかなかいいコンビです、山崎先生と環那さん。

対局のお二人と環那さんは、ほぼ同い年だそうです。
環「好みの女性のイメージも聞いてみました。」
環「大石四段は、まじめで、これは、私はピッタリです。落ち着いていて、これは、私はギリギリかな?」
山「ギリギリ・アウト。」
環「違います。私は落ち着いていますよ。」
環「それから、目に魅かれるっておっしゃっていました。大石四段とは、じっと目を見つめて話して下さいね。」
山「普通、じっと目を見つめて話す人はいないでしょう。」
環「それもそうですね(笑)」

環「稲葉四段は、おとなしくて、明るくてって、何か正反対ですね。いるのかしら?(笑)そして、純粋な人。」
山「純粋な人って、いますかね。」
環「皆さん、純粋ですよねぇ。山崎先生は、違うんですか?」
山「いや、僕は純粋ですよ。で、純粋と純粋とは、合わないから。」
環「山崎先生、何か思い出でも?」
山「いや、別に。でも、純粋だとだまされやすいから。だまされないといいですけど。」
山崎先生もだまされないように気をつけて下さいね〜(笑)

環那さんには、二人の少し先輩と思われていた山崎先生、
山「いや、もう、八つくらいは違うので・・・。」
環「えっ、そうなんですか!山崎先生と言えば、20代のイメージでしたけど。」
山「いや、まだ20代です。あと、数か月だけ。」
これは会場の笑いを取っていましたけど、環那さんの狙いだったのでしょうか。



また、マイクが時々、ハウリングを起こします。
それも山崎先生のマイクばかり。
山「普段の行いが悪いからかな?」
環「そうですね。(キッパリ)」
山「えっ!」
この辺りは、さすがに環那さんです。

将棋が進んで、後手陣の1段目の駒が動きました。
環那さん、大盤の91に届かない。
環「ついに届かなくなってしまいました。私、153センチぐらいしかないので。」
山崎先生に駒を渡して、91や81に置いてもらっている環那さん。
山崎先生が解説中は、駒を持ったまま、じっと待っています。
山崎先生を頼っている感が、何とも言えずかわいかったり・・・。

将棋は、終盤になり、30秒の秒読みが延々と続きます。
時にはお互いがノータイム指しになったり、時にはギリギリまで考えたりします。
山「相手の読み筋はわかりませんが、読み筋通りだったかどうかは、駒音や手つきでわかります。」
環「ええっ、そうなんですか!」
山「わかります。僕はそれで食べていますから。」
環「ホントですか〜。じゃ、今はどうです?」
山「駒音が軽やかなので、読み筋通りですね。」
まことしやかな話ですが、山崎先生、ホントですか〜?(笑)

将棋は、順位戦を思わせるような負けない手を指している感じです。
勝と思うと、激しくお互いの玉を攻めあう二人。
山「これだけ熱戦になると、鈴木さんを賭けて勝負をしている感じですね。どちらがいいですか?」
山崎先生の怪しげな振りにもひるまない環那さんです。
環「さあ、どちらがいいでしょうねぇ。うーん、わかんない。」
少し対局者の方に身を乗り出して、本気で考える風は環那さん。
将棋の流れが、またゆっくりになると、
山「あれっ?環那さんを賭けてたんじゃないかったのかな?」
と山崎先生。
環「そうですね、(私を賭けるってことで)やる気がなくなるといけませんから、やめておきましょう。」
上手にまとめた環那さんでした。

稲葉四段とは、王位戦の予選で当たる山崎先生です。
山「来月の初めぐらいに対局があるので、嫌ですね。」
環「そうなんですか。」
山「なかなか勝たしてくれないですから。」
その話は、対局が終わってからの話題でも出ました。
環「王位戦に向けての抱負をお願いします。」
山「抱負と戦形を言って下さい。」
稲「えっ、戦形もですか(笑)えー、一手損角換わりになると思いますが、頑張ります。」
環「山崎先生、解説の時より口が重いですよ。抱負をお願いします。」
山「いや、まあ、僕の方が先輩なので、負けないように頑張ります。」
最後は、思いがけず王位戦に向けての抱負も聞けました。

イベントが終了して、懇親会の受付をしていると案内がありました。
「まだ、大丈夫なの?」
これもまた、信じられな〜い(笑)
ひーちゃんさんたちは、懇親会の受付へ。
私は、今夜は帰らなくてはならないので、寂しく帰路へと別れます。
「じゃあ、次は東京(JT杯)で。」
ひーちゃん、橙さん、ぷみぽんさんと固く握手を交わして、ひとり長浜駅へと向かいました。
のんびりとして、参加者にはいい将棋まつりでした。