2013年 竜王戦第2局 現地解説会 (201311.21) (ドクター尼子)

木曜日は、うまいぐあいに、会場の隣町でお仕事。
仕事が終わり次第、早めに帰ることができるので、ちょっとサン・アンジェリーナに寄ってみました。
職場の方に送ってもらって、3時過ぎに着きました。
丘の上で、公共交通機関がなく、アクセスは悪いです。

結婚式場なので、解説会は宴会場と思うのが普通じゃないでしょうか?
矢印の通りに階段を下り、喫茶室を横切って進んでいくと、何とそこは、宴会場ではなく・・・。
『チャペル〜!?』
マジですか!
いや、驚き。

檀上の十字架の前に大盤が置いてあり、山崎先生と藤井九段が、マイクを握って解説中です。
新郎新婦の演者が座るベンチに、お客さんが座って聞いています。
初日なのに、結構な来場者です。空席なし。
仕方なく、後ろで立ち見。
山崎先生の近くの通路には、カメラマンさんがいるので、今は、近づけません。

盤面が動かないので、昔話をされています。
北浜さんとの新人王戦と竜王戦が同時期だったという話のようです。
「あの北浜さんとの将棋は、僕の中でもベスト3に入るいい将棋でした。」
「その裏で、私の竜王戦が。
 いや、こっちが表で、そっちが裏だよね。
 とにかく、竜王戦が大熱戦だったから、目立たなかったね。」
「そうですよ。竜王戦の陰に隠れちゃって。」
関東では、大人気の藤井九段の大盤解説。
関西では、評判の山崎先生の突っ込み。
わずかでしたが、軽妙なやりとりが聞けました。
仕事がなければ、最初から聞けたのに・・・。残念でした。

ところで、次の一手ができなくて、三択クイズが始まりました。
「私が、最初に竜王戦の海外対局をした場所を当ててもらいます。」
『上海だったかな?』
「国は、アメリカです。」
『ありゃ、もう外れた。』(笑)
「Aが、ロス。ロサンジェルスですね。
 Bが、ニューヨーク。
 Cが、サンフランシスコ。
 さあ、書いて下さい。」
将棋世界で見た記憶のあるC。
「3つとも、竜王戦が戦われた場所です。」
『そうでしたか・・・。』
「で、正解者は?」
「9名です。」
意外に少ない正解者。
藤井九段の色紙は3枚なので、確率3分の1。
と、山崎先生が、
「みなさん、ニューヨークだと知っていました?
 感で当たった人は?」
すぐに遮る藤井九段。
「やめなさいよ。みんな、私のファンで知っていたの!」
「そういうことにしておきましょう。」
実に呼吸もピッタリです。

余談。
最初の当選者が、何と沖縄の女性の方で、皆、驚いていました。

色紙の贈呈が終わると、解説会も休憩になりました。
せっかく来たのに、終わっちゃうのは残念でした。
袖のほうに移動して山崎先生を待っていました。
しかし、何と、お二人ともバージンロードを早足で帰って行かれるじゃありませんか。
『いかん。挨拶できない。』
あわてて追っかけます。
「山崎先生。」
何とか振り向いてもらえました。
「あれっ、どうしてここに?」
「仕事が早く終わったので。」
「ああ、夜勤でしたか?」
「いや、そうではないですけど。」
仕事をマッハで片づけて、会いに来たんです。

と、袋一杯の柑橘を持った女性ファンが山崎先生のところへ。
「あっ、ありがとうございます。」
深々とお辞儀をされる山崎先生。
「では、控え室のみんなで、いただいてよろしいですか?」
ますますお人柄の良さが出て来ていますね。
「写真、撮らせてもらっていいですか?」
山崎ファンの女性なら、ツーショットが欠かせません。
「はい、いいですよ。」
「大盤の前でお願いしていいですか。」
会場内に戻り、祭壇に上がる山崎先生。
階段が三段ほどあり、愛を誓う二人が、参列者から見えやすくなっています。
「十字架が入るように、お願いします。」
おっ、これは、山崎ファンの女性には、絶好のロケーションですね。

山崎先生が会場に戻られたので、当然ながら、撮影会になります。
お子様から、男性のファンからと、次々と声がかかります。
嫌な顔一つされず、むしろ、「こうして撮りましょうか?」と、優しい先生です。
終わるのをじっと待つのも、たこやきメイトは慣れています。

ようやく、撮影会も終わりました。
「先生、この後の出演予定はどうですか?」
一番知りたいことを聞きます。
「いや、それが、もう、今日はないんです。」
「えっ!?」
なんてこったい!
「この後が、小林先生と伊奈さんの師弟コンビで、最後は、畠山(成幸)先生と中村真梨花さんです。」
「それなら、もう帰っちゃおうかな。」
と、拗ねていると、そこへ女性ファンがおずおずと。
「写真をいいですか?」

「あっ、今日来られていたんですね。明日来られるものとばかり。」
と、気さくに声をかける山崎先生。
「今日から来ました。」
女性の方も、満面の笑顔です。
来ることを連絡しているので、かなり親しい方に違いありません。
「ここ、分かりにくかったでしょう?」
「ええ。でも、親切なオジサマが送って下さったんで。」
「えっ!?知らない人なんでしょう?」
「はい。」
「危ないことしましたねぇ。」
あきれてみせる山崎先生。
「そうですよ。どこへ連れて行かれるか、分かりませんよ。」
思わず、僕も突っ込みました。
「いや、ホントに良さそうな方でしたから。」
た、横あいから年配のファンが、割り込んで来ました。
「山崎先生、この前の花束贈呈、良かったですよ。
 ”諦めました”の一言が、男らしくて、とても良かった。」
矢内さんとの例の件ですが、女性ファンの方は、ご存じない様子。
「実はですね、以前にテレビの生中継で・・・。」
と、説明を自ら始めた山崎先生です。
サービス精神も、さらにパワーアップしています。
「へぇ、そういうことがあったんですね。検索してみます。」
楽しそうに笑う女性ファンの方。
「あれは、冗談だったんですよね、先生。」
一応、フォロー。
「でも、事実として広まっていますからねぇ。
 あっ、その縁で、最近、どの棋士よりも早く、矢内さんのご主人を紹介してもらえました。
 食事も一緒にして、和やかに握手もしたりしたんですよ(笑)」
「へぇ、そうなんですか。」
それで、今までは避けていた告白話を、自分から話されたのでしょうかね。

そんな話をしていたら、休憩時間も終わりそうになっています。
「山崎先生、写真、写真。」
「あっ、そうでした。」
ふたりで大盤の方に行きかけると、もう、次の解説者のお姿が!
「もう、小林先生が来られましたね。」
ということで、チャペルの外で写真を撮ることになりました。
チャペルの入り口でツーショット撮影完了。
ここも女性にとってはいい感じの場所です。
「じゃあ、控え室に戻ります。4時半頃に、ちょっと解説会に顔を出しますね。」
そうと言い置いて、山崎先生は、帰って行かれました。

「もしかして、森一門祝賀会とか参加されました?」
”どこかで、お会いしているのかも?”と探りを入れてみました。
「いいえ。そういう会があるんですか?
 山崎先生がらみのイベントは、関西が多くて、なかなか行けないんです。」
おそらく関東エリアのファンなのでしょう。
「北九州のイベントには行かれました?」
おっと、逆取材。
「いえ。あいにく仕事があったものですから、行けませんでした。」
「ステキなイベントなので、行けたら良かったんですけど、ちょっと遠くて。」
話題を変えてみました。
「山崎先生の応援ホームページは、見ていますか?」
「ええ、ええ。たこやきさんは見ています。
 ノートの更新、滞ってますよね。楽しみなのに。」
「まあ、あまり勝っていないので、先生の気分が乗らないせいでしょう。」
一応、擁護。
「そうなんですか。」
「それから、レポがありますよね。あれも、最近のがなくって。」
おっと、こちらに矛先が・・・。
「いや、常連組がイベントで集まるので、レポの必要がなくってね。」
あわてて言い訳している尼子です。
いや、しかし、しいのみさんはなかなか関西のイベントに来れていないし。
苦しすぎる言い訳ですね。
心の中で、深く反省。
ゆえに、今、久しぶりにレポを書いています。

いったん、お話は止めて、会場内へ戻りました。
山崎先生が来られる時間まで、まだ、1時間あります。
来場者が増えてきたので、役員席として確保してあったベンチも解放されました。
それで、女性ファンさんと並んで座ることになりました。
解説の合間に、ひそひそ話。
将棋の実力は、「入門書」程度とのことでした。
「解説も、専門的になると、さっぱりなんです。」
「最近は、棋士を見て楽しむ人が増えていますからね。
 他には、どんな棋士が好きですか?」
羽生三冠や森内名人、あるいは藤井九段あたりを考えていました。
「里見さんには、一度、会ってみたいです。」
里見さん!?
「いや、追っかけている対象が、一緒ですね。」
「ホントですか!」
倉敷藤花(23日)も行くのかと聞きましたが、お仕事で帰るそうです。
「遠くからでも、見ることができていいですねぇ。」
羨ましそうに言われました。

解説会は、次の一手を小林九段が出題します。
次の一手候補は、▲65歩。
盤上この一手という手です。
「でも、ここで出さないと、日が暮れてしまうからね。」
一日目の午後は、ほとんど手が進みませんから、仕方がありません。
対抗に、苦し紛れに▲15歩と端歩を突く手を上げ、
「後は、▲その他。どんな手でも正解とします。」
会場から笑いが起こります。
そして、いったん10分間の休憩に。

チャペルの入り口で、西瓜さんを発見。
「あっ、尼子さんも来てはるじゃないですか。」
行けるかどうか、分からないと言ってたもので。
「当日、仕事に行ってみないと、早く終わるかわからなくて。
 うまいぐあいに早く終わったので、3時頃に来ました。」
「私は、さっき着いたところです。」
「ところで、今日の先生の出番は、もうないそうです。」
「ええっ!そうなんですか。」
山崎ファンには、衝撃的な一言でしょう。
「ただ、4時半ごろに、ちょっと出てくるとは言われました。」
「それは楽しみですね。」
「僕は、今日帰りますけど、西瓜さんは?」
「私は、明日もいます。」
「明日は、5時ぐらいの出演と言われていました。土曜日は?」
「土曜日も、イベントが当たればいます。
 同じ日に、森信先生のイベントがあって、迷っています。」
「倉敷藤花は?」
「行かないですね。」
一気に情報交換完了。

次の一手は、やはり、▲65歩。
「▲その他が10人もいたんですか?!」
小林九段、笑っています。
チャレンジャーが多いですね(笑)

「立ち合いの仕事に戻ります。」
消えた小林九段の代わりに、大石六段が登壇。
伊奈・大石ペアになりました。
「実はですね、この後、大石さんとは順位戦で当たるんですよ。」
将棋界で『味の悪い』っていう関係ですね。
「大石さんは、全勝だからいいですけどね。
 私は、ちょっと首が危ないところで戦っているんで。」
この話題に、大石六段は、苦笑するしかありません。
「まあ、順位戦のことは置いて、解説しましょうよ。」
早々に、現局面に戻しました。
しかし、手が進まないので解説にも一苦労。
ふたりして、盤面をにらんだままという状態になり、休憩になりました。

それが、4時半の直前だったのです。
『ここで、山崎先生を呼んでくださればいいのに。』
と思いつつ、仕方なく少し肌寒いチャペルの外へ。
女性ファンさんと二人で、控え室の方向を見ながら、
「出てきてくださいますかねぇ。」
「解説会が無くなったので、どうでしょう?」
「30分の間に、少しでも山崎先生とお話ができれば嬉しいのに。」
話しながら西瓜さんを探しますが、近くにはいないようです。
もしかしたら、西瓜さんとは顔見知りかもしれませんから。
やがて、西瓜さん、柑橘の紙袋の方と話しながら、やってきました。

「初めまして。」
あら、初対面のようです。
「こちら、たこやきを見ていただいているそうです。」
「そうなんですかぁ。ぜひ、書き込んで下さいよ。」
と話しているところへ、山崎先生登場。
「控え室で、眠気が差してきたので、出て来ました。」
良かった、良かった。
「じゃ、さっき撮り損ねたチャペルでの写真、撮りましょう。」
と言うと、
「いや、いいんです。そんな。恐れ多い。」
と、盛んに照れまくる女性ファンさん。
「何なら腕を組んだって。」
と、たたみかけると、
「だって、”生”山崎先生を見るのも初めてなのに。」

何ですって!
初めて・・・。
「でも、山崎先生、来られるのをご存知でしたよ。」
「お手紙を書いたんです。」
「将棋連盟気付で?」
「気付です。」
にっこり。
「写真と実物は違うって言われないかと、心配していました。」
と、山崎先生。
「いや、そのまんまでステキです。」
はあ、そうですかぁ。
「先生の方から、もしかして、○○さんですか?って。
 気が付いてもらえて、嬉しかったです。」
目がハート。王子・山崎隆之、健在ですね〜。

結局、十字架の前で記念撮影。
西瓜さんがシャッターを切っています。
そう言えば、最近のたこやきメイト、山崎先生とお話しすることがメインですね。
『写真を一緒に。』というトキメキがあった頃を、何となく懐かしく思いました。

ところで、解説会では、後手に有効な手が出て来ませんでした。
山崎先生が、大盤の前にいらっしゃるので、この機会にと思い、聞いてみました。
「解説では、△62飛も△35歩も△46銀も、思わしくないと言われました。
 何か手がありますか?
 僕のような素人は、△73銀と打って粘ろうかなんて思っちゃいますが。」
「いやあ、△73銀ですか・・・。」
この反応、やはり、プロ的には、ありえない手なんですね。
「この後の解説者が、言おうとしていることを、僕が先に言うのもね。何なんですが。」
いたずらっぽい笑顔が、山崎先生のお顔に広がります。
「こう、△96歩という手があります。」
大盤の駒を持ちながら、
「ちょっと5分間だけ、解説しちゃいましょうか?」
「ホントですか。」
話が聞こえた前列のお客様からも、パラパラと拍手。
「では、5分間だけ解説します。」
マイクを持たれた山崎先生でした。

「この△96歩は、▲同歩△同香とします。
 さっきの△46銀と打つ変化で、歩切れに困ったのですが、その一歩を補充するんです。」
おお、さすが山崎先生。
「ただ、香を損しますので、それがどうか。
 それと、僕のような棋士はこれを考えますが、森内名人らしくはない手なのです。
 森内名人が指されるかどうか。」
すらすらと解説が進みます。
さらに、山崎先生は、モニターの方に進んで、
「今、棋士がどんなことを考えているかというお話をしましょう。」
その時、渡辺竜王が、深々と頭を下げる姿勢をとりました。
「あれっ、これは”投了”していますね!」
会場に、笑いが起こります。
「これで、駒台に手を置いたら、相手は投了だと勘違いしますよ。」
そりゃあるかもしれません。
「実は、駒台に手を伸ばすのが癖の方がいるんですね。
 駒台の上の駒を触るだけなんですけど。
 終盤にそれをされると、(投了かと)気になって困るんですよ。
 たとえば、G九段とか、ですね。」
さすがに、5分間でも笑いを取れる山崎先生です。

さらに心理解説が続きます。
「渡辺竜王は、どう来られても心配ないという顔をしていますね。
 優勢を意識した時は、”どうこられると嫌なのか”と、棋士はそれを考えています。
 ”その嫌な手”を相手はやってくるだろうと考えて、対策を考えます。
 でも、何をしてきても、大丈夫と考えているんでしょうね。」
「森内名人は、こぶしを握って、前傾姿勢でね。
 こういう時は、指しません。
 前に重心が行き過ぎていますから、こう(指す仕草をする。)なって、指せませんね。」
ちょいワル講座でも始まりそうでしたが、残念ながら休憩時間が終わりました。

「山崎先生、代打解説をありがとうございました。」
司会者から声がかかると、
「いや、写真を撮りに来ただけですから。」
と言い残して、爽やかに退場された山崎先生でした。
嬉しいサービスをしていただき、ありがとうございました。

山崎タイムも終わり、帰るタイミングを計りながら、5時からの解説会を聞きます。
「ホントに似てますね。ちょっとふっくらして。」
ファンの女性、畠山成幸七段を見て、笑っています。
将棋界の事情に詳しくなさそうだったので、伊奈・大石ペアの解説の合間に、
「畠山兄弟は双子で、今日は、お兄さんの成幸七段の方です。」
と、教えてあげました。
「えっ、双子なんですか!てっきり、畠山七段と言えば、鎮さんと思っていました。」
「ちょっと、お兄さんはふっくらしています。」
そういう会話をしたものですから。
小林九段が、伊奈六段を「親族の方」と呼んでいたのも説明しました。
「渡辺竜王の奥様が、伊奈さんの妹なんです。」
「それも知りませんでした。そうだったんですね。」

名残りは尽きませんでしたが、翌日の仕事もあるので、早めに会場を後にしました。
笑顔のステキだった山崎ファンの方、また、どこかでお会いしましょう。

-完-